メッセージングを考える

自分がインターネットを使い始めたのは1997年あたりからだ。幸運にも、父がパソコン関係の仕事をしており、PC9801時代からパソコンが家にあった。薄っぺらい5インチフロッピーのことを覚えてる人はもう少ないだろう。いや、いまとなってはフロッピー自体知らない人も増えてきてるはずだ。そのうちCDも忘れられていくのだろう。USBメモリも。そしてすべてクラウドへ。

なんて脱線から入ってきたが、メッセージングの歴史を語るには知識が少なすぎるので、自分がネットを使い始めてからのところから考えてみた。

1990年代

まず当然ながらEmailは当時(それ以前)からあり、今でもみんなが使っているメッセージング機能である。当時はインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)が付与するメールアドレスを使用するのが定番だったが、インターネット黎明期で、ベンチャーな企業がウェブメールを始めてた時期。とても初期の時代である。自分は最初JMAILを使っていた。驚いたことに今でも存在している

そして、当時一気にブレイクしたのがICQだ。ICQはインスタントメッセンジャー(IM)で、後で述べるが、今で言うLINEのようなものだ。友達登録をすることで自分の友達一覧を作り、オンラインの友達とリアルタイムでチャットができる機能だ。自分は英語・国際に興味があったので、インターネットの使用目的の一番大きなものが海外に友達を作ることだった。そして多くの人が海外の友達とも気軽に会話するのにIM、ICQを多用していた。その後、ITの巨人Microsoftがメッセンジャー(その後Windows Live Messengerになり、今ではSkypeに統合された)をリリースしたことでICQの人気は衰えていくことになる。自分もMSNメッセンジャーに移行した。

当時は他にもメッセージングサービスがあった。IRCである。こちらは現在でも現役で多くのユーザーがいる。一般にはほとんど知られていないが、技術者などには知名度が高い。IRCはサーバーに接続し、誰でも自由に部屋を作り、気のあう仲間同士で入室しチャット出来る機能だ。とてもシンプルでテキストメッセージを多人数でやるには良い機能だった。自分はAOC仲間と使っていた。

時代は進化しモバイルの時代がやってくる。1990年代後半、携帯電話が一般化しはじめテキストメールサービスが始まった。当時、自分は中国地方でサービスしていたデジタルツーカーを契約し、スカイウォーカーというテキストメールサービスを利用していた。その後JPHONEになりVodafoneになり現在のSoftbankになる。なお、一般向けには短命に終わったポケットベルは割愛する。また当時のインターネット速度は56kbpsでNTTのテレホーダイを使うのが常識だった。懐かしい。

2000年代前半

この辺りでSoftbankがYahooBBモデムを街頭で配りまくる戦略を始め、日本は一気にブロードバンドが普及していく。例に漏れず、自分もYahooBBに加入した。ここでネット界では巨人となっていたYahooに代わりGoogleが台頭してくる。そんな激動の時代。

メッセージングはそこまで大きく変化していないが、ウェブメールが一気に普及し始める。Yahoo始め大手がそれぞれウェブメールを始めていたし、90年代終わりから世界的にはhotmailが大ヒットしていた。そしてGoogleがGmail(2004)を始めたことで、ウェブメールの地位を確立していく。大容量で使いやすく、しかも無料ということで多くの人の注目を得たがGmailは最初招待制だった。eBayなどで招待状が販売されてた記憶がある。

この時期にもうひとつ特筆すべきものといえばSkype(2003)の登場だ。基本的にはインスタントメッセンジャーだが、高音質な無料のネット電話として一気に知名度を広げ、その後ネットから通常の電話にかけられるサービスや実際の電話番号を使って電話を受けられるサービスなど、ネットの先進的な使い方が受け世界的超ヒットした。今では人気のあるサービスである。

そしてこの時期にソーシャルネットワークサービス、通称SNSが始まる。その草分けがFriendster(2002)と言われている。その後一気にブレイクしたのはFacebook(2004)、ではなく、MySpace(2003)だ。おそらく、世界で最初に1億ユーザーを達成したソーシャルネットワークサービスだと思う。飛ぶ鳥を落とす勢いでSoftbankも出資し日本での展開を始めた。が、Facebookがアプリなどでエコシステムを作り上げヒットしMySpaceは落ちていくことに。日本ではmixi(2004)がヒット。SNSにより多くの人がウェブ上でメッセージをやりとりするようになった。

携帯電話も進化していき、ただのテキストメールから長文で写真も添付出来るようになり、一般ではもっとも普及したメッセージング機能となる。

2000年代後半

この時期での一番の変革は2007年に発売されたiPhoneだ。スマートフォンの時代がやってくる。これにより、ソーシャルネットワークがより一般の人に使いやすくなっていく。いつでもどこでもSNSを見て、メッセージを送受信出来るようになる。だが、それでもまだスマートフォンはインターネットを便利に使えるという位置づけで、メッセージングの主役は一般的には携帯メールだっただろう。だが、TwitterとFacebookが一気に普及し、これらでメッセージのやりとりをする人が増えていく。

2010年代

スマートフォンの普及により、インターネットが一般の誰でも利用出来るようになり、端末やOSの進化により多くのことができるようになった。それに伴い、多くのユーザーは携帯の音声通話・テキストメッセージにいちいち課金されるのに嫌気がさしていくことになり、すべてIPでやりとりするアプリ・サービスが普及し始める。ネットユーザーでは人気を博していたインスタントメッセンジャーが、ついに一般層にまで広がり始めたのだ。欧米ではWhatsAppViberが普及し、日本などアジアではLINEが、中国ではWeChatなど。これらの登場・普及により、オンラインじゃないとチャット出来ないSkypeは後塵を拝し、モバイルアプリのサービスインが遅れたFacebookも苦戦している。Googleに至ってはGoogle+の苦戦に加えHangoutsも苦戦中。iOS同士でしか使えないAppleのiMessageも・・・これにより、携帯メールも減りつつあるのが現状のようで、特に日本では携帯メールよりLINE、が常識になってきているようだ。

ここで大きな問題が出てくる。各サービスごとで分離されており、メッセージの送受信ができないことだ。携帯メール(SMS・MMS)なら携帯番号があればキャリア関係なく世界中誰とでも送受信出来る環境が出来ていた。Emailは昔から今日までオープンな仕様の元、メールアドレスがあれば誰とでもやりとりすることが可能で安定していた。日本の携帯メール(MMSまたは独自仕様)はプロトコルは違うにせよ、ユーザーにとってはEmailに近い存在だ。だが、現在のIMブームでこれらの”リアル世界”が縮小し、小さな島が浮上してくることに。これはユーザーにとっては不幸だと思う。

そこでインスタントメッセンジャーが普及し始めている今、注目してほしいのがXMPP(旧Jabber)だ。これはEmailがオープンな仕様で世界的に共通使用されているように、インスタントメッセンジャーのオープン仕様だ。Hangoutsの前にGoogleはGoogle TalkというXMPPベースのインスタントメッセンジャーサービスをしていた。今でもYahoo MessengerやApple MacのMessages(旧iChat)アプリで利用出来る。このXMPPを各社が採用することでサービスを超えてやりとりができるようになる。現状はLINEはチャットはHTTPと独自仕様でやりとりし、音声通話はSIPを使っているらしい。

もしくは、各社がAPIを公開または提携することでサービス同士のやりとりが可能になるだろう。現状は競争し合ってる中で、提携までいく可能性は低い。さらに、オープン仕様ではないので、誰でもサーバーを立ち上げて、というわけにはいかないのが面倒なところだ。アドレスも限定されてしまう。いってみればxxx@LINEかxxx@whatsappのような形でドメイン部分がサービス企業だけに独占されることになるわけだ。自由なインターネットという意味では健康とは言えない。

今後

この後、インスタントメッセンジャーサービスも統廃合が進むはずだ。Facebookが大手IM企業を買収して勝負を決める可能性もある。このIMが一時的なブームで終わるのかEmailと並んでメッセージングの双璧となっていくのかはわからないが、ぜひともオープンなもので誰でも自由に使えるものになればと思う。

 

shiva